脂肪吸引に起因する肺動脈血栓塞栓症による死亡を認定した最初の判決(最高裁運営サイトに全文掲載)。
関東で4院チェーン展開の東京郊外のクリニックで、30歳の肥満女性(身長156.5cm、体重64kg)が太腿内外の局所麻酔日帰り脂肪吸引(tumescent液で膨化した脂肪を900㏄吸引(膨化水分を引いて純脂肪換算500cc台)。その後に外出も繰り返し、持病の脊髄からの足の痛みで術後18日には整形外科受診。椎間板ヘルニア(疑)の診断時に右下肢に症状・所見を認めなかったが、術後20日(勤労感謝・祝日)に階段から落ちて捻挫し美容クリニックに湿布貼付希望で来院(受付Iの尋問調書)、(この2年3か月前の電話:乙32号証でも「その勝手に捻挫した足に湿布とか貼ってました。」等の発言)。その翌日肺塞栓で急死。下記の産経新聞のように書類送検・民事訴訟となった。

「太ももの脂肪吸引を行ったが、後遺症として静脈炎を発生させ、死亡させた疑い。」と報道
訴状は脂肪吸引後すぐ帰宅させたので深部静脈に静脈炎を生じ血栓形成して肺塞栓で死亡とあし、入院させなかった事などを過失と主張。

右膝上約10cm辺りの大伏在静脈内の微量の血栓の付着。弁不全はなく径の拡張・蛇行もない。微小血栓の中枢側の大伏在静脈に血栓を認めた証拠はなく、伏在裂孔の中の合流部の大腿静脈にも血栓は認めなかったことを剖検医は証言しつつも、この血栓が起源となって肺塞栓症になった可能性が高いとも証言した。(画像クリックで拡大)
【剖検医】はWikiの杏林大法医学・佐藤喜宣教授の頁で分かる右膝上10cm辺りの脂肪層内の大伏在静脈内に米粒より小さい陳旧性血栓を確認し、これを術後3週間後の急死の「起源」と証言した。また大伏在静脈を深部静脈と繰り返し証言し、反対尋問で表在静脈である文献を見せても大伏在静脈は深部静脈であると独自意見を変えなかった。また足の水疱、整形外科受診での左下腿~足背痛も血栓症の症状と即答した。なお被告医師は尋問で剖検医の書いた甲10の鑑定に反論し「大伏在静脈は表在静脈」「深部静脈は無関係」と証言した。
【鑑定医】の昭和大学形成外科の原口和久医師(判決確定前に原口クリニック開業)は、「血栓塞栓症の起因静脈は深部静脈が大部分であることは否定しようがないが、表在静脈が原因となることがない訳でなく(資料1、28、31)脂肪吸引術においてもその治療部位が表在層にとどまるとはいえ起こり得る可能性は治療に携わる美容外科医・形成外科医として考えておくべきである(鑑定書2頁中段)。」そして本手術と死の因果関係を認定した。
もう一つの争点の急死前日の患者の「階段から落ちて捻挫したので湿布を張って欲しい。」を受付に言ったことで、医師は看護師を助手に入れて顎骨削り中だったが、「どのような措置を執るべきであったか。」には、「まず診察をおこなうべきであった。」と鑑定書5頁下段で鑑定した。6頁で「下肢痛・腫脹がその治療法(脂肪吸引法)に関連ある血栓塞栓の一症状である可能性は否定できず、その時点で血栓塞栓症の発症と考えることは確定診断でないないにしても不自然ではないと考える。」とも鑑定した。
【被告医】書証乙29で血管外科の成書の『大伏在静脈は表在静脈(≠深部静脈)で表在静脈の静脈炎は深部静脈と無関係』および乙30で学術誌右下「塞栓源となる血栓は深部静脈に形成されたものに限られ,表在系に形成された血栓が局所より逸脱して肺動脈に塞栓を起こすことはない.」を引用して主張。
証人尋問では裁判長の尋問で「血栓塞栓症~生ずる~認識していたということですよね。」に「全く考えていなかったです。動いていますから。」と答えているが、ここの核心部分は「・・・」と伏せる加工がされている。
【受付 I 】証人尋問で死の前日の来院は『階段から落ちて捻挫したので湿布を張って欲しい(診察希望でない)。』とのこと、『湿布は受付側で貼り、医師と看護師は手術中だった。』ことを証言。
【オペ患】受付は予約手術患者■■■■のことを「確か顎か何かの手術でいらした患者さん,かなり大きいオペだったことを覚えてますけど」と言い、また捻挫患者が来たときにオペ中だったのを覚えている。被告医師も予約患者のオペ中に捻挫の来院があったと後に聞いたと証言。原告患者側弁護士も11月23日に顎の手術が行われていたのを前提に尋問している。この日の領収書も証拠を提出・主張もした。
【裁判官】齋藤隆裁判官らは、判決文全文の最終頁で、担当医だけに275万円×2人分と年5%の金員の賠償命令。
この判決は東京高裁で審理中なのに最高裁サイトに16年6月から下級審主要判例情報として掲載。(齋藤氏と高裁の裁判体3人は平成4~7年の同時期に東京地裁に居た)。裁判所内規からは所属49部から意見書が提出されて掲載と分かる。掲載時期から意見書は齋藤氏が出したと強く推認される(判決文末尾の2名は違う)。
【裁判所】民事訟廷庶務に令和4年「医学的に間違っています」の電話1本が架り、その24日後に東京地方裁判所内で削除を決裁され掲載が消された。
ーーー(判決文の重要点)ーーー
(1) 脂肪吸引と死亡との間に因果関係が存する|第3の4の(2)のエの(ア):PDF9枚目。
(2) 祝日午後に営業していた美容クリニックに「捻挫に湿布を貼って欲しい」と突然来院した患者に事務長が湿布を貼ったら患者は「あーどうも。」と言って低姿勢で帰った(乙32)が、この時に予約患者の顎削り中の医師に来院を伝えたか否かで、受付は「伝えたと思います。」医師は「聞いていないと思います。」と対立。判決では受付は「原被告と利害関係のない第三者|第3の4の(1)のアの2段落目末尾:PDF7枚目」との判示がされ、受付の証言が真実とされた。
(3) 受付も医師も当日は混んで忙しかったとある中で、突然の(捻挫)来院の診察をして胸痛や呼吸苦はなく下肢の腫脹の証拠もない中で、死に至る血栓症を診断・加療し、高次の病院へ転送・加療させて肺塞栓での死亡を回避させる「相当程度の可能性」の法理から医師有責、賠償となった。ここで顎削り中の予約患者はどうするのか全く書かれていない。
判決では脂肪吸引の手術と3週間後の急死に因果関係を認めたが、後年この因果関係を認めるのは『難しい。』と齋藤裁判官は繰り返し証言した。
また捻挫に湿布貼付希望の患者を、予約の顎削り中の患者を差し置いて診るのを「純粋医学的な当時の医療水準に従ったやり方」とも証言した。判決を下して20年近く経ち、齋藤隆裁判官(元)は大変な話をした(反訳:1頁・2頁・3頁)。
手術と死に因果関係を認めるのも難しいのでは「脂肪吸引に起因する肺動脈血栓塞栓症による死亡を認定した最初の判決」でなくなる。
また「攪拌なんかすると」は被告医師側の準備書面(四)の図解説明を読んでいない。「血栓が飛ぶ恐れが非常に強い」も乙29の理解が全くない。
さらに美容クリニックに患者が捻挫に湿布貼付希望で急に来たとき、被告医師は予約患者の顎削りの中だったのに、「あの当時における医師の医療的な措置を施す義務というですかね、純粋医学的な当時の医療水準に従ったやり方として、どういうことをすれば良いのかという関係から言っているわけ。」と話している。

